ともいきエッセー

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ともいきエッセー vol.5

 「ただ人は情けあれ」

 前回、文章の最後に「もっとやさしくなってほしい」と書き、「これで終了!」とフェイスブックにアップしてもらった。それを見ながら、ふと思い出した一句があった。室町時代に編まれた『閑吟集』の中の句「ただ人は情あれ、朝顔の花の上なる露の世に」だ。この句で締めくくればよかったかな、と。
 この句を見るかぎり、その社会もあまりよい社会ではなさそうだ。「ただ人は情あれ」と言わざるをえない作者の哀しさとやさしさが伝わってくる。そういえば、『方丈記』の中で養和の飢饉の惨状を見た鴨長明が、「・・・その思ひまさりて深きもの、必ず先立ちて死ぬ。その故は、わが身は次にして、人をいたはしく思ふあひだに、まれまれ得たる食物をも、かれに譲るによりてなり。・・・」と認めている。「その思い」とは情・やさしさであろう。
 しかしいま、日本人は情をかけることをどう思っているのだろう。「情に棹させば流される」ということもある。「情は人のためならず」が「人に情をかけるものではない」というように解釈する人も多くなっている。
「ただ人は情あれ」。人々が互いに思いあい、やさしさの中で生きていける社会は夢なのだろうか。

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