ともいきエッセー

一覧へ

ともいきエッセー vol.50

「認知症、そうなったときどうする?」

 「お父さんも、少し足腰を鍛えたほうがいいよ」。夕食時、テレビのコマーシャルを見ながら娘が言った。テレビでは、60歳を過ぎると足腰の筋肉の衰えが急激に進むから、それを鍛える健康危惧の説明をしていた。近年、テレビでは健康危惧ばかりではなく、高齢者向け栄養剤のコマーシャルも盛んに流されている。
 小生、娘に言った。「身体が元気で、認知症になり、徘徊してほしい?」と。60代後半になった小生、いつ認知症になるかわからない。そうなった時にどうするか。「うーん、それは困る」と娘。
小生にとっては、3年前に91歳で亡くなった母が見本になる。
 母は、5年ほど認知症だった。日々変わっていく母の姿に、さみしさや悲しみ、そして怒りがないまぜになった日々だった。これが人間だろうか、と思ったこともあった。しかし、今でも妻と"これだけは助かったね"と話すことは、母が年齢とともに足腰が衰え、認知症になってからは、家の中をヨチヨチと歩ける程度で、一人で外出ができなくなっていたことだ。酷いと思われるかもしれないが、日々世話をしてくれた妻にとって、母が家の中にいてくれることは、大きな安心感になった。
 高齢者にもそれぞれ個人差がある。いつまでも心身が健康でいられればいいが、こればかりはわからない。そうならないように用心するのも大切だが、そうなった時のことを考えておくことも大切だ。なってからでは考えられないのだから。
 小生が母を見本とするもう一つがある。母は、認知症になってから、妻をはじめ他者から何かをしてもらうと、必ず「ありがとう」と言った。このひと言がどれだけ周囲の人の優しさを引き出したか。自分にそれができるかは分からないが、できるように今から心がけていたい。(J)

このページのトップへ