ともいきエッセー

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vol.70「人間的な、あまりに人間的な」

 去る12月7日夜、東京深川の富岡八幡宮で凄惨な事件が起こった。八幡宮宮司の姉を元宮司の弟が殺し運転手を傷つけ、自らも犯行に加わった妻を殺して自殺したという事件だ。原因は、宮司職に対する姉と弟の長年にわたる確執だと。

 なんということだ。これが宗教者のすることか。

 たしかに、後継者問題はこの八幡宮ばかりではなく、寺院でも起きている問題だ。しかし、宗教者であるかぎり、他者を殺傷することなどもってのほかで、何がどうあっても許されることではない。犯人の弟は、以前から素行が悪く、それで宮司を辞めさせられたという。彼は、自分が宗教者であることをどう思っていたのだろうか。いや、そんな意識があったら、こんな事件は起こしていないだろう。まさに欲得に魅せられた人間の、あまりにも人間的な行為ではないか。さらに、彼は「死んでも怨霊となって祟る」という言葉を残しているという。もう、なにをかいわんやだ。

 巷では、この事件を見て、「宗教者と偉そうにしていても、一皮むけばこんなもんだ」という声が聞こえている。これは宗教者にとって、エライ迷惑なことだ。日々、人々のために一生懸命に宗教活動をしている宗教者にとって、築き上げてきた信頼を一朝にして崩されたようなものだ。実に悲しい事件である。

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