ともいきエッセー

一覧へ

vol.78「待てない社会」

 4月、新年度を迎え、いかにも新社会人といった姿の若者が通勤電車のなかに見られる。初々しさの中に、少々緊張気味の顔をして混雑した電車に揺られている姿は、何十年か前の自分の姿を思い出させられる。あの当時、毎朝の電車の中で何を考えていただろうか。仕事はどんなことをするのだろう。先輩や上司はどんな人たちだろう。上手くできるかな......。彼らの顔を見ながら「がんばれよ」と内心声をかける。

 しかし、今の新人は可哀そうだ。報道などを見ていると、今の企業は新人を即戦力とみなしているという。ゆっくり育てられるような余裕がない、と。小生が新人のとき、上司が「ゆっくり焦らずに、みんなが何をしているか、よく見ておけ」と言われたことを今でも覚えている。最初の仕事は電話番だった。「電話番ができるようになれば、一人前だ」とも言われた。電話番ができることは、誰がどんな仕事をしているか分かることだと、後から気が付いた。今はそんな余裕もないのか。

 考えてみれば、今の社会は「待てない社会」といってもいいのではないか。すぐに結論を求め、無駄を排除したがる。それが人々を殺伐とした気持ちに追い込み、それが当たり前のような人々の気持ちを作り上げてしまう。みんな短気になっている。イライラ、イライラ。

 そんな社会がいいわけないでしょ。みんなでもっと考えましょうよ。

このページのトップへ