ともいきエッセー

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vol.82「閻魔さまに舌を抜かれちゃうよ」

 昨今の国会や、アメリカンフットボールの試合での反則などについて、「言った、言わない」、「嘘をついている」「いや、真実だ」というようなやりとりがテレビのニュースや新聞紙面で問題にされている。聞いていても、見ていてもイヤになってくる。どちらが真実かは分からないが、「いいかげんにしろ」と言いたい。

 こんな無様な大人社会を、子ども達はどう見ているのか、大人たちは考えているのだろうか。子ども達に道徳や倫理の授業をする前に、道徳や倫理が必要なのは今の大人たちだ。

 「嘘をついたら、閻魔さまに舌を抜かれるよ」とは、私が幼いころ祖母によく言われた言葉だ。幼心に、閻魔さまがペンチのようなもので、私の舌を抜く場面を想像し、恐怖とともに、嘘をついてはいけない、と思ったものだった。今の人は、"来世などない、死んだらおしまい"などと思って、目には見えない大いなるものへの畏敬の念が無くなっているが、死後、生前の行いについての裁きがあると思ったら、この世での行いにももっと気をつけるだろう。これが宗教心だ。自分が言っていることが嘘かどうかは自分だけがしっていること、"他者にバレなければいい"ではなく、大いなるものは見ているよ、という意識こそ、今の社会に必要ではないだろうか。

 しかし、人間は嘘をつく。「嘘も方便」というように、他者を救うために嘘をついた方が良い場合もある。しかし、今回の騒ぎは自己保身、組織の保身、そして自己や組織の損得のためにしか見えない。いや、こうしたことは今の日本社会全体を覆っているように思える。人間としての倫理観・正義感がまったく感じられない。日本人はいつからこんな人間になってしまったのだろう。みんな、閻魔さまに舌を抜かれちゃうよ。

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