ともいきエッセー

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ともいきエッセー vol.14

空は高く、風もさわやかで、そこかしこが秋めいてきた。
そんな秋の夕方、車を駆って湘南の海へ出た。夕日を写して海のそこここがきらきらと赤く輝いている。その中に波待ちをしているサーファーの姿がうねりに合わせて上下している。平和で穏やかな情景だ。
こんな日がいつまでも続けばいいと思いながら、思考は深い闇へと落ちていった。近年、ずっと考え続けていることだ。
仏教では「少欲知足」を説く。あまり欲張らずに、足りていることを知る、ということである。たしかにこの教えは正しい。欲望は3毒(欲望・怒り・愚かさ)のひとつで、人間を惑わす煩悩の代表的なものだ。この欲望のために多くの事件も起きている。しかし、いまの時代、この言葉を人々に説けるだろうか、というのが小生の悩みなのである。もし、人々がこの教えを実行したら、いまの日本経済はどうなるだろうか。生産は落ち、倒産する企業もでる。失業者が巷に溢れるだろう。それはどんな社会になるのだろうか。考えただけでもゾッとする。近世の経済は、人間の欲望を肯定して成り立っているのだ。
現在の日本経済は、1億2千万人を超える日本人を餓えさせないために、日夜作り続け、消費するサイクルの中で成り立っている。そして、世界に冠たる経済大国になっている。このサイクルは人間の欲望があって成り立っている。この欲望を否定はしないが、ほどほどにと言う。とてものことではないが、1億2千万人の口を満たすことはできなくなるだろう。別に日本がいつまでも経済大国であってほしいなどとは思わない。人口も減ったっていい。人々が生きていて幸せを感じられればいい。そのような社会に軟着陸するためにはどうしたらいいんだろう。ほどほどの欲望とはどのくらいの欲望をいうのだろう。また、湧き出てくる欲望を抑えることはできるのだろうか。
いつの間にか、夜の闇になっていた。繰り返す波の音だけが聞こえる。(J)

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