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ともいきエッセー

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ともいきエッセー vol.28

「ともいきのこころ」

 娘が通っている小学校の運動会を見に行った。ダンスや玉入れなど順調にプログラムが進み、最後の徒競走になった。たしか2年生の部だったと思う。号砲一発、きれいにスタートした。みんな一生懸命走った。そして、それは、ゴールを少し前にして起こった。
 他を大きく引き離し、トップを走っていた少年の靴の片方が脱げて、コース外に飛んでいった。少年は転んだ。会場から「あっ」という声があがった。靴が飛んでいったのを見た2番、3番目を走っていた子、急に立ち止まり、顔を見合わせながらコース外の靴を拾いにいった。先頭を走っていた少年も立ち上がりゴールせずに戻ってきた。残る子どもたちも走るのをやめ、心配そうに3人を見ていた。靴を拾った3人は、見守っていた他の子どもたちのところに戻り、手をつなぎながら一緒にゴールした。
 会場からは割れんばかりの拍手が沸きあがった。だれもが子どもたちの行動を褒めたたえ、笑顔になっていた。
 これから20年あまりが経った。今でもあのときの情景ははっきりと眼に浮かんでくる。この子どもたちは今どんな青年になっているだろう。殺伐とした世知辛いこの世の中で、当時の純真で優しいこころを持ち続けているだろうか。持ち続けていてほしい。これが「ともいきのこころ」の大前提なのだから。(J)

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