ともいきエッセー

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ともいきエッセー vol.32

「抗わず、自然の為すままに生きる」

 テレビを見ていて不図思った。最近、栄養剤や健康器具のCMがやけに多くなっていないか、と。BS放送やケーブルテレビになるとほとんどがこのCMだ。「そんなに効目があるの?」と言いたくなってくるが、画面では、元気溌剌な高齢者が飛び跳ねている姿が映されている。疑り深い小生としては、とてもその効能を全面的に信じることはできないが、CMが続いているということは、きっと効目もあり売れているからなのだろう。経済的にはいいことだが、詐欺まがいの商品もあるから気をつけてほしい。
 しかし、こうしたCMの背景には、人々の間に、老いを否定的にとらえる考え方とか、老いによる病に罹りたくない、という老齢を迎えた者の不安があるからではないか。ピンピンコロリではないが、死ぬまで元気で趣味を楽しみ、死ぬときは、寝たきりになって家族に迷惑をかけずにコロリと逝く。そんな思いが強迫観念のように高齢者の心を占めているのではないか。たしかに病に罹り、家族や人の世話になるのは辛い。高齢者がそう思うのも詮無いことではあるが、高齢者のひとりでもある小生としては、どこか違和感を持ってしまう。「若く見られなくたっていいじゃないか。年相応に年齢を重ねてきた重みを感じさせる老人になれ」と。
 小生、学生時代から尊敬していた高齢者がいた。高齢者といっても70歳前で亡くなったが、物静かで知的好奇心が強く、どこか飄々とした人物だった。その彼がよく言っていた「人間、死ぬときには死ぬ。抗わず自然の為すままに生きること」という言葉が忘れられない。そして彼のような年寄りになりたいと今でも思っている。この思いが、栄養剤や健康器具のCMに違和感を覚えてしまうのだろう。
 「自然の為すままに生きる」ということが、おぼろげながらに分かってきた現在、「死ぬときは死ぬ」と覚悟を決めて、今を生きることに力をそそぎたい。(J)

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