ともいきエッセー

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vol.88 「生命はこの世だけのものではない」

 「お父さん、また人身事故で電車が止まってる。何時になるか分からないから、先にご飯食べてて」

 昨夜、勤めに出ている娘から電話がきた。「またかよ、こないだあったばかりじゃん」。

 我が家では、娘が帰るのを待って夕食になる。18時半まで仕事をし、それから帰ると、家に着くのは20時を過ぎる。娘は東海道線を使っている。

 「どうする? 先に食べる?」という妻の言葉を聞きながら、どんな事故だったんだろう、と考えた。鉄道の場合、事故と言ってもほとんどが自殺らしい。しかし、その影響は多くの人におよぶ。いろいろ事情があるのだろうが、死がすべてを解決するものではないと思う。

 そんなことを考えながら、ふと思った。もしかしたら、自殺をする人は、自分の生がこの現世だけのものと思っているのではないか、と。今を生きるのが辛く苦しいから、いっそのこと......、そしてすべてが終わる、と。

 生命は地球より重いとは言わないが、先祖から綿々とつながる我が生命は、自分の生命であっても自分だけのものではない。そして、この生命は未来へと続く生命でもある。そしてなによりも、来世を生きる生命でもある。死を思う人には、ぜひとも考えてほしい。死はなにも解決しない、と。

 夏休みが終わると、子どもの自殺が増えるという。保護者の人は、こうしたことを子どもと話し合ってほしい。

 夕食は娘の帰りを待ってとった。

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