ともいきエッセー

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vol.96 「坊さんはいつも変なことを言っていればいい」

 この季節は酒席に出ることが多い。そうした席で、いつも思い出す恩師がいる。当財団の元理事長の袖山榮眞師だ。今は長野のご自坊に帰られ、御年83歳の今でも読書や経典などを調べて元気にされている。この袖山師が浄土宗の仕事のため東京住まいをしているとき、同じく当財団の事務局長をしていた藤木雅雄師と3人で毎夜のごとく居酒屋へ通った。

 そうした席で、袖山師は、「坊さんはいつも変なことを言っていればいい」と言われていた。それは「人々は世間の価値観で物を言う。それは常に変化する。我々坊さんは仏教の価値観でものを言えばいい。それは変わらない。移ろう世間からみれば変に聞こえることになるが、真実は真実で変わらない」という意味だった。そして、「世の中が混乱したとき、『あの坊さん、いつも変なことを言っていたけど、たまには話を聞いてみようか』となるんだ」と。

 この話は、私の中に恩師の言葉として強く刻まれている。こんな思いをいつも持っているからか、先月の30日に発行された養老孟司氏の『猫も老人も、役立たずでけっこう』というエッセー集の初めの「吾輩はまるである」の中に、「別の目で見るということは、物事の見方を変える良いきっかけになるんです。自分の状況が必ずしも当たり前ではないことに気づくんですよ」というくだりがあり、また「信用できるものはなんだ?」という中に「人もずいぶん昔から生きてますけど、時々世の中おかしくもなりますよ。だから、じいさんやばあさんの話もたまには聞いたほうがいい。そうすると現在が偏っていることに気づきます」って。「ああ、袖山先生と同じことを言っている」と感心してしまった。そして、このお2人は悟っているんだろうか、と。

この養老孟司氏を迎えて、当財団では明年の1月26日に東京・港区の芝学園で「現代をともにいきる」と題してフォーラムを開く。ぜひ、ご来場いただき、〝ともにいきることの大切さ″を一緒に考えてもらいたい。

(フォーラムの詳細は、こちらをご覧ください)

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