ともいきエッセー

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vol.101 「生まれてきて良かった?」

 先日、27歳になる娘に「生まれてきて良かった?」と訊いてみた。

 千葉県野田市の小学生が、父親から虐待を受けて亡くなった事件の報道を見ながら、こうした事件を娘はどう見ているか知りたかったからだ。

 今日、虐待による幼児や子供の死や怪我が頻発している。可哀想なことだと思いながら、「この親は一体何を考えているのか」というところに興味をもってしまう。大多数の親が「しつけ」だと言っているらしい。だから、なかなか取り締まれないと。しかし、しつけだったら何をしてもいいとはならない。そしてまた、たとえ親がしつけだと思って手をあげたとしても、そこに子を愛する親の心がなければ、それは単なる暴力だ。

 こうした虐待を受けている子どもたちは、はたして「生まれてきて良かった」と思うだろうか。「良かった」と思うことは、親に守られ、安心して日々を楽しく暮らしていることが最低の条件だ。こうしたことに恵まれず、もし、子どもが「生まれてこなければよかった」と思うようだったら、なんと悲しいことだろう。それは親の罪だと思う。

 私の問いに娘はなんと答えたか。「う~ん、これまでは良かったと思っているけど、これからのことを考えると、いっそのこと、生まれないほうが良かったかもしれないって思うかも」と。それは今の社会が、経済的にも、子育てにも、親の介護にも、そして仕事や人々との付き合いにも不安があるからだという。社会全体がギスギスして圧迫感があると。「将来、どんな暮らしができるのか、まったく見通しができないのよね」と。経済成長の中「なんとかなるだろう」と思って生きてきた、私たち世代とは大きな違いだ。

 子どもたちに「生まれてこなければ良かった」と思わせるのが親の罪なら、これからの社会に不安を与えるのは政治の罪なのか。しかし、その政治家を選んでいるのは、私たちひとり一人だ。

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