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ともいきエッセーvol.111 「バカだなぁ。でもホッとする」

 保釈中の容疑者が逃走するという事件が続いた。「出頭すると連絡があった。逃げるとは思わなかった」という検察の発表に、テレビのワイドショウなどのコメンテーターから「信じられない、何を考えているんだろう」、「逃げられるとは考えなかったのか」「もっとしっかりしてほしい」、「職務怠慢では」などと検察や警察への厳しい批判が多く語られている。

 こうした番組を見ながら、私は、検察官に対して「バカだなぁ」と思いながらも、どこかホッとした気分になっている自分がいることに気づいた。

 なぜだろう、と考えた。考えた末に気づいたことは、「逃げるとは思わなかった」という検察の人たちの考え方にあると気づいた。犯罪の容疑者であっても、人間としてその人を信じているのではないか、と思えることだ。まさに性善説だ。こういう考え方に、私の中の気持ちがやすらいだのではないか、と。こんなことを言うと、では、逃げた容疑者が新たな犯罪を起こしたらどうする、と言われそうだが、思ってしまうのだからしようがない。こうした検察の人たちを「バカだなぁ」とは思うが、いかにも善人そうで「ホッとする」

 近年のワイドショウをはじめとする報道で、正論ばかりを並べ立て他者を責め立てるコメンテーターたちを見ていると、なぜかイヤな気分になり、人間不信になってくる。この閉塞感に満ち、ギスギスした人間関係の中で、ちょっとおっちょこちょいでも、こうした人たちがいる検察官に親しみを感じてしまった。

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