ともいきエッセー

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vol 165「あの時の子どもや大人たちは、今......」

 前回は、テレビコマーシャルを見て腹立たしいことを書いた。腹立たしいことは、現代社会を見ていて数えきれないほどたくさんある。政治から経済、そして私たちの日々の暮らしで感じている様々なことまで......。しかし、内心では、こんなことに腹を立てていてもせんないことと、哀しいことではあるが諦めに似たようなことを感じてもいる。
 そこで今回は、少し心が温かくなる話をひとつ。
 それはもう20数年も前の話。小学生だった娘たちの運動会に行ったときのことだった。
 何年生の徒競走だったかは忘れたが、低学年の小さな子どもたちだった。
号砲一発、7・8人の子どもたちが一斉にゴール目指して走り出した。走る子どもたちの若き保護者たちは、わが子の走る姿を写真やビデオに撮ろうとゴール近くで待ち構えている。そのゴール近く、トップを走っていた男の子の運動靴が脱げて、コース外に飛んでいった。男の子は「アッ」と言って立ち止まり、飛んで行った靴の場所を探した。その時、3・4人後方を走っていた男の子が、スーとコースから外れ、飛んで行った靴を拾いに行った。そして靴を拾い、靴を拾いに来たトップの男の子に手渡し、靴を履くのを見守った。そして、2人はビリになってゴールした。たしか手をつないでのゴールだったと思う。
 と、突然、観客席のどこかから拍手が起こった。そして、それにつられるように、観客席中に大きな感動の拍手が沸き上がった。僕と妻も感動の拍手をおくった。そして、夜、娘たちと、飛んだ靴を拾いに行った男の子と、トップだったのに靴を拾いに戻った男の子の行動について話し合った。
20数年後の今でもときどき思い出す情景だ。あの時の靴を拾いに行った男の子、拾ってもらった男の子、そして、そのことに感動して拍手した大人たちは、今どんな生き方をしているだろうか。拾いに行った子どもは、今もあの優しさを保っているだろうか。拾われた子どもは、優しさを受け継いだだろうか。そして、この情景に感動した大人たちは......。

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